3大黒人女性ジャズボーカリストの一人 サラ・ヴォーン(1924-1990)その①
黒人女性三大ジャズボーカリストといえば、必ずその一人として挙げられるサラ・ヴォーン。
この人の来歴などは、ウィキペディアなどで調べていただくとして、足元にも及ばないながら、歌い手としての視点に立って書かせていただきたいと思います。
とにかく、『Divine One(=神の声)』と称された天性の声の持ち主が、偶然にもジャズの全盛時代に生き、当然のようにもてはやされ活躍し、その歌声をあたかも人類が天然資源を消費するかのように惜しげもなく消費していった人生、と言い切ってしまいます。
素敵だけど真似しちゃダメな人の最右翼に位置するヴォーカリスト(だと思う)。
ジャズボーカルを勉強していると、誰もが彼女の歌声に大きな衝撃を受け、一度は憧れますが、誰一人として彼女のように歌える人はいません。
彼女の影響を受けている優れた歌手は大勢いますが、サラのような唯一無二の存在を標榜してしまったばっかりに、それに囚われ、その歌手独自の魅力を出し切れていない感があるのです。
なので個人的にはこの人をお手本にするのはお勧めしていません。それよりも、サラとは違った自分の歌を見つけた方が幸せです。
サラの歌は、やはりあの天性の歌声あってのもの。また彼女はビリーホリデイのようなジャズボーカルのスタイリストではなかった。従ってサラの歌は彼女の一世一代の芸であって、残念ながら後に伝承することはできないのですね。
ジャズを歌うことに特に固執していたわけではなかったのでは?
そんなわけで、もともと歌がとんでもなく巧い人が、たまたまご時世がジャズ全盛期だったのでジャズ歌手となっただけで、当然ジャズは好きだったでしょうが、ジャズというジャンルに固執していたわけではなさそうです。もともと、オールマイティに歌える歌手だったと思います。
なぜなら、ジャズが衰退した1960年代中頃、あの有名な『ラヴァーズ・コンチェルト』や『ピーター・ガンのテーマ』も、本人の意思か商売(シノギ)かどうかは分かりませんが、難なく歌いこなしていました。
彼女の輝かしいキャリアから言うと、これらの曲は敢えてピックアップする必要はないかもしれませんが、少しでも「コレ、知ってる!」があるといいなと思って挙げてみました(汗)TVCMでもしょっちゅう使用されています。
この時代に、レコード店でビートルズやストーンズのレコードと一緒に、上記のようなサラのレコードが並んでいるのを想像してみてください。 とにかく今を生きていたら、ビヨンセやアデル級の歌手になっていたかもしれません。
下の動画は、多分一番有名なサラ・ヴォーンの歌う姿(若い頃)の動画です。彼女が1990年に亡くなった時、訃報を知らせる日本のニュースではもっぱらこの映像が流れていました。
サラ・ヴォーンと言えば、一般的には『ミスティ』が有名です。
ピアニストのエロール・ガーナーが作曲したこの美しい曲は、まずピアノで演奏するインスト曲として作曲されただけに(歌詞は後付け)、ピアノという楽器の特性上、メロディの繋がりなど歌手の喉の都合は考えてない作りになっており、ボーカル曲としてはかなりの難曲です(笑)。
しかしそこは誰よりも声のコントロールに長けたサラ・ヴォーン、過激なインターヴァルもなんのその!軽々と歌いこなしています。
そして見てくださいこの勝ち誇ったような強気な表情!性格もどうやらこんな感じだったらしいです。